バイト初日

DRAWS A DREAM

2024/08/24 19:47

フォロー

私は消臭ビーズの中に手を突っ込みました。

 

それはバイト中のことでした。

その感触はツルツルしていました。

ちょっとタピオカみたい。でも透けてて宝石みたい。

 

普段触りたくても触れない消臭ビーズ。

今、目の前に大きめのビンに入って置いてあります。

触ったら怒られちゃうかも。そんなことを考える暇はなく、もう消臭ビーズの中に手首まで埋まっていました。

 

「これ潰してみたい!」

と思った瞬間、

 

「その消臭ビーズ触らないでね〜」

 

遠くから店長の声が聞こえてきました。

まじ?と思い、手を引っこ抜こうとした瞬間、隣に誰かいることに気づきました。

顔を右に動かすと先輩と目が合いました。

 

先輩「ここちゃんもう触っちゃってますーー!!」

 

先輩は店長を追うようにして部屋を出ていきました。

 

私は消臭ビーズと2人きりになりました。

「触っちゃだめなの…?」

そう消臭ビーズに聞くと、まるで「いいよ」と言っているかの様にキラキラと光っていました。

「でもだめって今言ってた。触っちゃだめ!」

自分に言い聞かせました。

「でもまだ潰してない……」

手が消臭ビーズの方に伸びかけている時、先輩が戻って来ました。

 

先輩「ここちゃん、それ手荒れちゃうやつだって!」

私「そうなんですか!すみません……」

先輩「お手手洗って!」

 

水道で手を洗っていながらも、私は消臭ビーズを見つめていました。

潰してみたかったな…。

 

先輩「どうした?」

私「いや別に……」

先輩「潰したかった?」

私「潰したかった」

 

この消臭ビーズはもう使えないから捨てようとしていたと後から聞きました。

「これならいいよ」と、手が荒れない消臭ビーズ(捨てるやつ)を私の目の前に置いてくれました。

1粒手に取って潰してみると、綺麗に半分に割れました。

予想外の結果に私たちは驚きました。

もっとこう……ぐしゃっとなるかと思いきや、綺麗に真っ二つ?!

 

先輩と一緒に、半分に割れた消臭ビーズを見て笑い合いました。

消臭ビーズ1粒で始まる私のバイトライフ。

また消臭ビーズを捨てる日はいつかな?

これからに期待とワクワクでいっぱいの

バイト初日。

ページを報告する

コピーしました

有料会員になるとオーナーが配信している有料会員限定のコンテンツを閲覧できるようになります。

DRAWS A DREAM ¥600 / 月

会員登録する

コピーしました